178 研究系及び研究施設の現状
鈴 木 敏 泰(助教授)
A -1)専門領域:有機合成化学
A -2)研究課題:
a) 電界効果トランジスタのための有機半導体の開発 b)有機 E L 素子のため高効率燐光錯体の開発
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) ペンタセン(C22H14)は平面的な芳香族炭化水素であり,有機トランジスタのp型半導体として最も高い移動度を記 録している。このペンタセンと相補回路やp-nヘテロ接合を形成するとき,対になるn型半導体はペンタセンとよく 似た物理的・電気的性質を持つことが望ましい。フッ素は最も電気陰性度が高く比較的サイズの小さい元素である ため,パーフルオロ化はサイズをあまり変えることなく p 型半導体を n 型半導体に変換する効果的な方法である。 我々は最近,パーフルオロペンタセン(C22F14)の合成,キャラクタリゼーション,単結晶X線解析,および有機トラン ジスタの作製を行った。パーフルオロペンタセンは,ペンタセンより電子親和力が高く,HOMO-L UMOギャップは 小さい。単結晶ではへリングボーン構造をとり,分子間で短い炭素−炭素コンタクトおよびπスタッキングが見ら れた。パーフルオロペンタセンは n 型半導体としてトランジスタ動作を示し,0.1 cm2/V s 以上の移動度を持つこと が分かった。
b) エチルフェニルカルバーゾルを単位とするデンドロンを合成し,これによりイリジウム燐光発光錯体を修飾した。 0世代から2世代までのデンドリマーは有機溶媒によく溶け,スピンコートにより良質のアモルファス膜を形成し た。現時点で,量子収率は 8% を超えている。
B -1) 学術論文
K. ITO, T. SUZUKI, Y. SAKAMOTO, D. KUBOTA, Y. INOUE, F. SATO and S. TOKITO, “Oligo(2,6-Anthrylene)s: Acene-Oligomer Approach for Organic Field-Effect Transistors,” Angew. Chem., Int. Ed. 42, 1159–1162 (2003).
T. TSUZUKI, N. SHIRASAWA, T. SUZUKI and S. TOKITO, “Color Tunable Organic Light-Emitting Diodes Using Pentafluorophenyl-Substituted Iridium Complexes,” Adv. Mater. 15, 1455–1458 (2003).
C ) 研究活動の課題と展望
最近,次世代の有機電子材料として「単一分子素子」や「ナノワイヤー」等のキーワードで表される分野に注目が集まってい る。S PM技術の急速な発展により,単一分子メモリ,単一分子発光素子,単一分子ダイオード,単一分子トランジスタなど基 礎研究が現実的なものとなってきた。一個の分子に機能をもたせるためには,従来のバルクによる素子とは異なった分子設 計が必要である。計測グループとの密接な共同研究により,この新しい分野に合成化学者として貢献していきたい。現在行っ ている有機半導体の開発は,単一分子素子研究の基礎知識として役立つものと信じている。